412.失ってから気付く

車がゆっくりと路肩に停まり、藤堂澄人はシートベルトを外して車を降り、ある場所へ真っ直ぐに歩いていった。

藤堂澄人の視線を追うと、松本裕司は自分のボスの背の高い凛々しい後ろ姿が、市内でも有名なペットショップに入っていくのを見た。

松本裕司:「……」

社長は本当に奥様にペットを買うつもりなのか?

奥様が無表情で猫や犬を抱いている姿を想像すると、松本裕司は思わず口角を引きつらせた。

社長は奥様にペットを買うのが適切な選択だと確信しているのだろうか?

しばらくすると、車の横で自分のボスを待っていた松本裕司は、藤堂澄人がキャリーバッグを手に持ってペットショップから出てくるのを見た。中には非常に美しいラグドールの子猫が入っていた。

実際に目にしなければ、松本裕司は自分のような冷たい印象のボスが猫を抱えている姿なんて想像もできなかっただろう。