車がゆっくりと路肩に停まり、藤堂澄人はシートベルトを外して車を降り、ある場所へ真っ直ぐに歩いていった。
藤堂澄人の視線を追うと、松本裕司は自分のボスの背の高い凛々しい後ろ姿が、市内でも有名なペットショップに入っていくのを見た。
松本裕司:「……」
社長は本当に奥様にペットを買うつもりなのか?
奥様が無表情で猫や犬を抱いている姿を想像すると、松本裕司は思わず口角を引きつらせた。
社長は奥様にペットを買うのが適切な選択だと確信しているのだろうか?
しばらくすると、車の横で自分のボスを待っていた松本裕司は、藤堂澄人がキャリーバッグを手に持ってペットショップから出てくるのを見た。中には非常に美しいラグドールの子猫が入っていた。
実際に目にしなければ、松本裕司は自分のような冷たい印象のボスが猫を抱えている姿なんて想像もできなかっただろう。
藤堂澄人が戻ってくるのを見て、松本裕司はすぐにドアを開け、思わずキャリーバッグの中でのんびりと横たわっているラグドールに目を向けた。
純白の柔らかな毛並みで、生まれたばかりの子猫なので、まだ小さく、尖った小さな耳はピンク色をしていた。
鮮やかなブルーの瞳は気品があり魅力的で、思わず抱きしめたくなるような存在だった。
松本裕司は、この猫が自分のボスと非常によく似ている点があることに気づいた。それは、驚くほど美しい容姿をしているのに、人を見る目つきが高慢で近寄りがたい雰囲気を醸し出していることだった。
そう思いながら、松本裕司は思わず口を出してしまった。「社長、これは奥様へのプレゼントの猫ですか?とても綺麗ですね。」
この一言で、ボスから冷たい視線を向けられ、松本裕司はすぐに察して黙り込んだ。
ボスが気づいて、奥様を喜ばせようとしているのに、そんなことを口に出すなんて!
自分が悪い!
そう思いながら、松本裕司は心の中で自分の頬を強く叩いた。
藤堂グループには優秀な人材が大勢いたが、社長である藤堂澄人は本当に暇を作ることができなかった。
病院に二日間入院していただけで、会社には彼が処理しなければならない山積みの仕事が待っていた。
さらに、バタフライ広場の入札情報が漏洩し、プロジェクトも今日明日にも始まるため、会社全体が忙しかった。