416.愚かで利己的

「たかが数億円?藤堂グループのお金は風が吹いて集まってきたとでも思っているの?お兄様はまだ十代で、藤堂グループを救うためにどれだけ努力したか、あなたは知っているの?」

「たかが数億円だって!よく言えたものね!確かに今の藤堂グループにとってはたいした額じゃないかもしれないけど、それでもお兄様が一生懸命稼いだお金よ。よくも他人のためにお兄様を非難できたわね?」

「あなたが何不自由なく藤堂家のお嬢様として暮らせているのは、お兄様のおかげなのよ。あなたじゃない!何も努力もせずに、よくもそんな恥知らずな発言ができたものね!」

藤堂お婆様は、藤堂瞳のあまりの愚かな発言に本当に怒り心頭だった。

「そう、木村靖子のことをそんなに心配するなら、いいでしょう!藤堂グループが被った損失を、植田涼に靖子の代わりに返済させなさい。そうすれば、お兄様に彼女を許すよう考えてみましょう。」

藤堂瞳はこの言葉を聞いて、すぐに不満そうな表情を浮かべた。

「なぜですか?植田家のお金だって風で集まったわけじゃないでしょう!」

「はっ!植田家のお金は風で集まったものじゃないのに、お兄様のお金は風で集まったというの?」

藤堂お婆様は藤堂瞳にますます失望し、もう話を続ける気も失せた。「出て行きなさい!藤堂家から出て行きなさい。」

藤堂お婆様は怒りで杖を地面に叩きつけながら、執事に命じた。「執事!今後、藤堂瞳が藤堂家に現れたら、足を折って追い出しなさい。」

「お婆様!」

藤堂瞳はお婆様までもが自分を追い出そうとするとは思わず、信じられない様子で目を見開いた。お兄様が九条結衣という悪女に騙されているのはまだしも、どうしてお婆様までこんなに理不尽になってしまったのか。

靖子がいなければ、お兄様は今日の地位にはいなかったはず。八年前に藤堂グループは倒産していたかもしれない。お婆様はそのことを考えもせず、どうして靖子を刑務所に入れるような恩知らずな真似ができるのか。

「お兄様の言う通りね。たとえあなたが半身不随になっても、植田家はそう簡単には返品しないでしょうね!」

そう言うと、お婆様は怒りで体を震わせながら階段を上がっていき、もう藤堂瞳を見ようともしなかった。

「お婆様……」

「出て行きなさい!!」