彼は今になって後悔していた。なぜ九条二郎を買って九条結衣にプレゼントしたのだろうか。
まるで自分で恋敵を作ってしまったような気分だった。
九条二郎を見ると、舌を出して九条結衣の顔を舐めながら、満足げな甘えた鳴き声を上げている。それを見ていると、彼は嫉妬で頭に血が上った。
その顔を、自分はまだ舐めたことがないのに!!!
この時の藤堂澄人は、突然「残虐な」考えが浮かんだ。九条二郎を車から投げ捨てたくなった。
車が空港に近づいた頃、九条結衣の携帯が鳴った。小林静香からの電話だった。
「お母さん。」
「……」
「九条初がどうしたの?」
九条結衣の表情が一変し、その言葉を聞いた藤堂澄人も顔色を変え、九条結衣の方を振り向いた。
「わかったわ。もうすぐ空港に着くから、すぐに帰るわ。お母さん、それまで九条初を見ていてくれる?」