440.お前なんか要らない、嫌いだ

九条結衣の声を聞いて、九条初は急に顔を上げ、次の瞬間、手に持っていたブロックを投げ捨て、九条結衣の胸に飛び込んで、ぽっちゃりした両腕で結衣の首をきつく抱きしめて離そうとしなかった。

九条結衣の目は、すぐに赤く縁取られた。

この瞬間、彼女は自分が良い母親ではないことを知った。初を産んでから、仕事のために、ずっとベビーシッターに任せきりだった。

彼は一度も文句を言ったことがなく、まるで小さな大人のように分別があったので、彼女は本当に心配する必要のない子供だと思い込んでいた。

でも彼はたった三歳の子供なのだ。ママのそばにいてほしい子供なのに、どうしてそんな大切なことさえ気にかけなかったのだろう。

今の九条結衣は、心が痛みと後悔で一杯で、九条初をもっときつく抱きしめた。

九条初はずっと黙ったまま、ただ九条結衣をきつく抱きしめ、頭を彼女の胸に埋めて、一言も発しなかった。

藤堂澄人は部屋に立ったまま、近寄らなかった。初めて、息子がこんなにも結衣に甘えている様子を見て、邪魔をする勇気が出なかった。

同時に、本当に初を結衣から引き離さなかったことを感謝していた。もしそうしていたら、一生結衣を取り戻すことはできなかっただろう。

九条結衣は初がずっと口を開こうとしないのを見て、ますます不安になった。

彼女は頭を下げ、そっと初の額にキスをして、優しく言った:

「ねぇ、ママに話してくれる?どうして幼稚園のお友達と喧嘩したの?」

抱きしめている小さな体が少し震えるのを感じ、九条結衣の心は刺すように痛んだ。

九条初はまだ話そうとせず、ただ九条結衣の首を抱く手に、さらに力を込めた。

藤堂澄人は、いつも活発で可愛い息子が何か分からない理由でこんなに黙り込んでしまうのを見て、胸が痛んだ。

近寄って母子の傍らにしゃがみ、手を上げて優しく息子の頭を撫でながら言った:「初、パパに話してごらん。どうして友達と喧嘩したの?もし友達が初をいじめたなら、パパが仕返ししてあげようか?」

藤堂澄人がそう言い終わるや否や、初のぽっちゃりした小さな手が澄人の手を払いのけた。

「行って!あなたなんか嫌い!」

九条初の声には明らかな涙声が混じり、漆黒の瞳はすでに赤く縁取られていた。

息子がついに話したのを見て、九条結衣と藤堂澄人は思わず安堵のため息をついた。