かつての怒りのせいで、結衣に長年の辛い思いをさせただけでなく、自分の実の息子までも私生児と言われる結果となってしまった。
藤堂澄人は今になってようやく、九条結衣に許しを請う資格など全くないことを痛感した。むしろ、彼女にもう一度チャンスをくれと頼むことさえ、厚かましい要求だと感じていた。
九条結衣も九条初の言葉に驚き、心が大きく揺れ動いた。
彼女はずっと、九条初が父親という存在について一度も口にしなかったのは、本当に気にしていないからだと思っていた。ママがいれば十分だと。
しかし、三歳の子供にとって、父親という存在が幼い心の中でどれほど切望されているものなのかを、彼女は当たり前のように見過ごしていた。
幼稚園の行事のたびに、他の子供たちはパパとママが一緒に来るのに、彼の傍にはいつもママだけしかいない時の、あの切望と失望が入り混じった気持ちを思うと、結衣の心は何度も何度も引き裂かれる思いだった。
どうしてこの子のことをこんなに無視できたのか、どうして……
あの時、藤堂澄人から密かに逃げ出し、こっそりと出産した彼女は、命を与えたことが何か偉大なことだと思っていた。でも、この子の成長に最も重要な部分を忘れていた。
自分は安心して澄人から離れて暮らすことばかり考えて、この子のことを完全に無視していた。
産んだからには、すべてのことを考えるべきだったのに。
自分が最善だと思うものを九条初に与えたつもりだったが、実は九条初の心の奥底で最も欲しかったもの、最も切望していたものが何なのかを知らなかった。
九条初を抱く彼女の手は激しく震え、傍らで見ていた藤堂澄人は、結衣の顔から血の気が引き、唇が震える様子を見て、自分を何発も殴りつけても心の後悔は晴れないと感じていた。
彼は結衣を見つめ、何度か口を開きかけたが、声は喉に詰まったまま、どうしても出てこなかった。
しばらくして、やっと自分の声を取り戻し、ゆっくりと結衣の側に歩み寄って膝をつき、そっと彼女の肩に手を置くと、掌の下の体が少し硬くなるのを感じた。
「結衣、九条初のことは僕に任せてくれないか。」
彼は嗄れた声で言った。暗い瞳には、自責の念と後悔の色が満ちていた。
結衣は目に涙を浮かべながら彼を見つめ、半秒ほど考えてから、九条初を藤堂澄人の手に委ねた。