470.天子の怒り、千里に浮かぶ死体

応接室に入ると、藤堂澄人は遠慮なくソファーに腰を下ろし、怒りを見せずとも威厳のある態度で、まるで天下を統べる帝王のようだった。

普段は高圧的な態度で知られる幼稚園の金田会長は、今や藤堂澄人の前で戦々恐々と立ち尽くし、まるで叱責を待つ部下のように、藤堂澄人こそがこの幼稚園の大物オーナーであるかのようだった。

彼が藤堂澄人の前でこれほど孫のように従順なのも無理はない。というのも、彼の企業の多くが藤堂グループと取引があるからだ。

もしこの大物を怒らせるようなことをすれば、まさに「天子一怒すれば、千里に浮屍」という惨状を招くことは間違いない。

彼は藤堂澄人の表情を密かに窺い、しばらく考えた後、おずおずと前に進み出て、おどおどした様子で言った:

「藤堂さん、当園で何かご不満な点がございましたら、どうぞおっしゃってください。直ちに改善させていただきます。」

九条結衣は藤堂澄人の隣に座り、普段は顔が利く大物である人物が、藤堂澄人の前では孫のように従順になっている様子を見て、権力と地位があるのは本当に素晴らしいと感心した。

彼女は幼い頃から金銭に不自由したことはなく、家族の人脈も広かったが、今になって気づいた。藤堂澄人と比べると、まだまだ大きな差があることを。

藤堂澄人は何も言わず、ただ九条結衣の手を握り、興味深そうに彼女の指先を弄び、時折触れては離すという遊び方をしていた。

九条結衣が手を引こうとすると、彼は力を強めて掴み、まるで彼女がこれらの役員たちの前で怒り出すことはないと確信しているかのようだった。

今回は、彼は九条結衣の心をよく読んでいた。息子の面子を取り戻すため、九条結衣は外部の人々の前で藤堂澄人との愛情表現に非常に協力的だった。

ある人の口元に浮かぶかすかな得意げな笑みを見て、九条結衣は密かに彼を睨みつけ、何度も平手打ちを食らわせたい衝動に駆られた。

藤堂澄人が黙れば黙るほど、金田会長はますます不安になった。その心臓は、まるで処刑を待つ囚人のように、断頭台の刃が落ちるのを恐れながら、いつ落ちるかも分からない不安に苛まれていた。

そのとき、藤堂澄人が突然動き、目を上げた瞬間、九条結衣によって生まれた笑みは完全に消え去り、人を震え上がらせるような冷たさだけが、彼の鋭い瞳から放たれた。

「彼らに聞け。」