しかし、彼らはそれを心の中で言うだけで、実際に藤堂澄人の前で不平を言う勇気のある人は誰もいなかった。
C市で顔が利くと自負するこれらの人々も、C市を出れば何の価値もない存在だった。
彼らにも分別があり、藤堂澄人の言葉がどれほど理不尽であっても、見知らぬ人のために立ち上がろうとする者はいなかった。
それに、自分の子供が藤堂澄人の息子と同じ学校の生徒であることを利用して、藤堂澄人という大木に縋りつこうとしているのだから。
一方、ずっと黙っていた九条結衣は、藤堂澄人がこのような教育方針を取ることに予想外で、少し同意できないと感じていた。
確かに石川の両親は懲らしめが必要だが、このように息子を教育するのは良くない。もし九条初が権力を笠に着て人をいじめる小さな暴君になってしまったら大変だ。