419.彼らは何を求めているのか

もちろん、彼女は彼に構う気もなく、振り返って子猫と遊び続けた。

藤堂澄人は、彼女が子猫が自分のものだからといって猫を放り出して立ち去ることもなく、心の中で喜びを感じた。

結衣は実は...彼のことをそれほど嫌っているわけではないようだ。

そう考えると、藤堂澄人の唇の端に浮かぶ笑みが、少しずつ大きくなっていき、抑えることができなかった。

九条二郎が妻を喜ばせることができたことを考えると、先ほど妻の気を引いたことについては一時的に目をつぶることにした。さらに「恩寵」とでもいうように手を伸ばして九条二郎の小さな頭を撫で、続いてその顎を掻いてやった。

子猫にとって、これは間違いなく心地よい動作だった。

丸い大きな目が気持ちよさそうに細くなり、口からは気持ちよさそうな鳴き声が漏れた。

九条結衣はその愛らしく柔らかな様子に笑みを浮かべ、思わず隣に誰が立っているのかも忘れてしまった。

当然、隣の人の優しい眼差しが自分の顔に向けられていることにも、その人の口角が思わず上がっていることにも気付かなかった。

「お父様、何をご覧になっているのですか?」

二階の書斎で、九条愛は大御所が窓辺で下を眺めて微笑んでいるのを見て、好奇心から近寄った。

すると、遠くに元夫婦が寄り添うように立っているのが見えた。男は背が高くハンサムで、女は繊細で美しく、そこに可愛らしい子猫が加わり、その光景は見ているだけで鼻血が出そうなほど甘かった。

九条家の大御所がその二人を指差しながら言った。「あの二人を見てごらん。こんなに良い夫婦なのに、なぜ離婚なんてしたのかね?何の得があるというのかね?」

九条愛はその二人を見つめながら、目に羨望の色を浮かべた。

「本当に、何の得があるのでしょうね。」

九条愛の声には何か物悲しさが混じっていた。姪と姪の夫を見ながら、その目には隠しきれない羨望の色が浮かんでいた。

彼女は遠藤隼人と結婚して二十数年になる。これまでの道のりで、彼女と遠藤隼人は互いを敬い合って生きてきた。彼の収入は自分より少なかったが、それは気にしていなかった。自分が幸せだと感じられれば良かったのだ。

今や四十代になっても、まだ自由気ままな生活を送っている。周りの友人たちは、遠藤隼人が彼女を甘やかしているからこそ、こんなに自由気ままな性格になれたのだと言う。