もちろん、彼女は彼に構う気もなく、振り返って子猫と遊び続けた。
藤堂澄人は、彼女が子猫が自分のものだからといって猫を放り出して立ち去ることもなく、心の中で喜びを感じた。
結衣は実は...彼のことをそれほど嫌っているわけではないようだ。
そう考えると、藤堂澄人の唇の端に浮かぶ笑みが、少しずつ大きくなっていき、抑えることができなかった。
九条二郎が妻を喜ばせることができたことを考えると、先ほど妻の気を引いたことについては一時的に目をつぶることにした。さらに「恩寵」とでもいうように手を伸ばして九条二郎の小さな頭を撫で、続いてその顎を掻いてやった。
子猫にとって、これは間違いなく心地よい動作だった。
丸い大きな目が気持ちよさそうに細くなり、口からは気持ちよさそうな鳴き声が漏れた。