425.パラサイト男、出ていけ

遠藤隼人の緩んでいた表情は一瞬で凍りつき、驚愕の眼差しで九条愛を見つめ、一言も発することができなかった。

叔母が遠藤隼人の言葉に騙されるのではないかと心配していた九条結衣は、この言葉を聞いた瞬間、完全に安心した。

叔母は彼女が想像していたよりもずっと強かった。

雫と頭を下げ、込み上げる笑いを抑えていると、隣にいた人が静かに近づいてきて、彼女の耳元で抑えた笑みを含んだ声で囁いた：

「今やっと分かったよ、君のその容赦ない口が誰に似ているのか」

九条結衣の口角の笑みが突然凍りつき、藤堂澄人の笑みを含んだ瞳を見上げ、容赦なく睨み返した。

「せっかく私が顔を立ててやったのに、あなたが捨てるというなら取り返すわ。これまで私の家で食べて寝て、大学の美術教師の仕事だって私が紹介してあげたのよ」

「あなたは生まれついての寄生虫なのよ。男のプライドなんて語る資格ないわ！」

「当時の私が目が眩んでいなければ、今でもあなたは路上で絵も売れない、食べていくのも困る貧乏人のままよ！」

「私にプライドを説くの？」

九条愛はバッグから予め用意していた離婚協議書を取り出し、遠藤隼人に投げつけた。

「サインして即刻出て行きなさい。これからは、あなたの男のプライドを好きなだけ守ればいいわ。私は邪魔しないから！」

遠藤隼人の目には更なる衝撃が広がった。九条愛がここまで徹底的にするとは思いもよらず、離婚まで持ち出すとは。

初めて出会った頃、彼女は彼のことをどれほど好きだったことか。父親に泣きついてまで彼と結婚したいと言い張ったのに。

たかが些細な女性と寝ただけなのに、まさか離婚を求めてくるとは思いもしなかった。

遠藤隼人は自尊心が九条愛によって再び完全に踏みにじられたと感じた。わざわざ遠くから彼女を説得しに来たのだから、きっと彼の示した妥協案に従うだろうと思っていたのに。

結果はどうだ？

言葉で彼を侮辱しただけでなく、離婚まで持ち出すとは？

甘やかしすぎた！

「九条愛、本当に離婚するつもりか？後悔するなよ」

実際のところ、遠藤隼人は離婚する勇気がなかった。

他人は知らなくても、彼自身が一番よく分かっていた。今の彼の衣食住、全てが九条愛からの施しだということを。

九条愛と離婚すれば、彼には何も残らない。

「サインして！」