476.藤堂社長は甘えん坊な小悪魔

自分の嫁を得るために藤堂夫婦に女の子を産むよう執拗に勧めていたこぶたは、ようやく両親に連れて帰られた。

こぶたが去った後、藤堂澄人は立ち上がってゆっくりと九条結衣の側に歩み寄り、彼女の赤くなった顔を見つめながら、手を伸ばして頬に軽く触れ、艶めかしく笑いながら言った:

「お前、うちの息子はもう嫁をもらえることになったんだから、他人の息子を独身のままにしておくわけにはいかないだろう。だから……」

藤堂澄人の言葉が終わらないうちに、九条結衣は彼の脛を強く蹴った。「入場の時間よ、並びに行きましょう」

「さっきの提案は……」

藤堂澄人は諦めきれず、珍しく妻が恥ずかしがる様子を見て、さらに追い打ちをかけようとした。

九条結衣は彼の目に溢れる期待を冷ややかに見つめ、冷笑しながら言った:「そんなに女の子が欲しいなら、あなたが産めばいいじゃない。私は止めないわ。なぜ私に聞くの?」

そう言うと、息子の手を引いて急いで列に並びに行った。

藤堂澄人は一瞬呆然としたが、すぐに彼女の言葉の意味を理解し、心中不満げになった。

顔を曇らせ、急いで彼女の後を追いかけ、手を掴んで身を屈めて耳元で囁いた:「俺はお前との間の女の子が欲しいんだ」

運動場には各クラスの保護者が立ち並び、藤堂澄人が彼女の耳元で話しかける仕草は、他人から見ると頬にキスをしているように見えた。

まるで無尽蔵であるかのように、イチャつく様子を周りに見せつけていた。

人目が気になって少し居心地が悪くなった九条結衣は、藤堂澄人の手を振り払い、警告するような目つきで言った:「外では慎みなさい」

本来は彼に距離を置いてほしい、度々艶めかしい仕草で人々の想像を掻き立てないでほしいという意図だったが、藤堂澄人は非常に意図的に理解力を下げたようだった。

九条結衣がそう言うのを聞いて、彼の顔に浮かぶ色っぽい笑みは収まるどころか、さらに大胆になった。

「つまり、家の中なら遠慮しなくていいってことだよね?」

九条結衣に振り払われた手は、また厚かましく近づいてきて強く握りしめ、九条結衣が振り払おうとしても振り払えないほどだった。

彼らを見つめる周囲の人々:「……」

他人の前では常に近寄り難く、人を寄せ付けない雰囲気だった藤堂家当主が、私生活ではこんなにべたべたする「小悪魔」だとは思いもよらなかった。