429.九条政は諦めない子供

九条結衣がアメリカから帰国して以来、九条政は自分が彼女に押さえつけられて息もできないような状態になっていることに徐々に気付き始めた。彼が何をしようとしても、九条結衣に簡単に抑え込まれてしまうのだった。

だから、今この瞬間、九条結衣を見ても、彼女のことを歯ぎしりするほど憎んでいても、表情には出すことができなかった。

九条爺さんのその皮肉な一言を聞いて、彼は気まずそうな表情を浮かべ、「お父さん、あの日のことは私が悪かったです。だから謝りに来たんです」と言った。

「ふん、謝り終わったなら出て行け」

九条爺さんは九条政のような人間のことをよく知っていた。何か頼み事がなければ、こんな風に頭を下げて謝りに来るはずがない。

結局のところ、あの私生児のために頼みに来ただけだろう。