九条結衣が突然そんな甘えた声で彼を呼んだので、藤堂澄人の心臓は再び強く締め付けられ、鼓動は制御不能なほど加速し始めた。結衣はこれまで一度もこんな風に彼を呼んだことがなかった。
「結衣……」
藤堂澄人は喉が乾いているのを感じ、彼女のその柔らかな声に全身が熱くなってきた。すでに落ち着かない心も、さらに騒がしくなり始めた。
九条結衣は彼の顔をじっと見つめ続けていた。まるで小さな野生の狼が大きな白うさぎを狙っているかのように。彼は結衣が目の前で唇を軽く噛むのを見た。
この強い誘惑的な仕草に、藤堂澄人はさらに体が熱くなるのを感じた。
彼は分かっていた。腕の中のこの女性がこのような姿で誘惑し続けたら、きっと自分でも制御できないことをしてしまうだろうと。
特に、彼女の頬が赤く染まり、目を細めて彼を見つめる様子は、まさに彼の人間性と忍耐力への挑戦だった。
九条結衣は突然手を伸ばし、彼の顔に優しく触れた。藤堂澄人の体は硬直し、急いで彼女の手を掴んだ。「結衣、やめて」
彼の声は、さらに掠れ、わずかに震えていた。ある思いが、徐々に制御不能になり始めていた。
しかし九条結衣は全く気付かず、ただじっと彼を見つめ続け、次の瞬間、さらに彼の体に寄り添い、再び甘えた声で呼んだ。「お兄さん」
藤堂澄人:「……」
この憎らしい妖精め、わざと彼を苦しめようとしているのか?
「あなた、本当にかっこいい」
九条結衣は顔を上げ、彼に近づいた。柔らかな唇が彼の顎に触れ、彼女が話すたびに、その唇が彼の顎を撫でるように動き、彼の全神経がその言葉と仕草に反応した。
彼は結衣を見つめ、無意識に喉を鳴らし、瞳の色が濃くなった。「俺は本当にそんなにかっこいいのか?」
掠れた声は、さらに明らかな震えを帯びていた。
「うん、かっこいい」
彼女は真剣に頷き、藤堂澄人が心の準備もできないうちに、突然彼の唇に強く口づけた。
藤堂澄人:「……」
この妖精め、本当に彼の命を取る気か。
手で彼女の頭を押さえ、深い瞳に警告の色を宿らせて言った。「結衣、これ以上続けたら、俺は君の弱みに付け込むことになるぞ」
しかし九条結衣は彼の警告を気にする様子もなく、というより、彼の言葉を全く聞いていないようで、引き続き彼の顔を見つめながら言った:
「私と結婚してくれる?」