次の瞬間、九条結衣が彼の前で唇を尖らせているのが見えた。まるで飴をねだって断られた子供のように、声には涙が混じっていた。
「うぅ~~さっきキスしたのに、私の気持ちを弄んでおいて責任も取らないの。」
涙がポロポロと零れ落ち始め、藤堂澄人は完全に慌ててしまった。
「結衣、いい子だから泣かないで、お願いだから……」
藤堂澄人は女性をなだめるのが得意ではなかった。特に目の前で泣いている九条結衣には、数滴の涙で彼の心は乱れ、どうしていいかわからなくなってしまう。
「じゃあ、私と結婚してくれるの?してくれないなら、また私キスしちゃうわよ。キスしたら、責任取ってもらうからね。」
涙目で彼を見つめる彼女は、酔っ払っているはずなのに、その真剣な表情は妙に冴えていて、藤堂澄人は彼女のこの告白に、まるで蜜を食べたかのように心が甘くなった。