496.奥さん、愛してる

「奥さん」

「もう一回言って!」

「奥さん」

「もう一度……んん……」

藤堂澄人は言葉を続けず、彼女の後頭部を抑え、そっとキスをした。

最初の不慣れさと比べると、今の藤堂澄人は明らかに上手くなっていた。

口の中に漂う微かな酒の香りが、藤堂澄人の抑制を更に効かなくさせた。

九条結衣は信じられない様子で目を見開き、まばたきしながら、驚きと戸惑いの混ざった表情を浮かべ、頭の中に浮かんだ唯一の考えは——

えっ?旦那さんがまたキスしてきた?

藤堂澄人は九条結衣が自分を見つめる輝く瞳を見つめ、まるでファンがアイドルを見るような熱烈な眼差しに、心が完全に溶けてしまいそうだった。

「奥さん、愛してる……」

その言葉と共に、藤堂澄人はキスを深めた。

感情が高ぶるにつれ、九条結衣を抱く力が強くなっていき、まるで彼女を自分の骨肉に溶け込ませたいかのように、この溢れんばかりの愛情を発散させようとした。

九条結衣は酒を飲みすぎていて、今こうして藤堂澄人に強く抱きしめられると少し苦しかった。

最初は喜んでいた表情も、今では少し不機嫌になり、眉をしかめ始めた。

次の瞬間、彼女は少し仕返しの気持ちで、藤堂澄人の舌先を思い切り噛んだ。やや強めに噛んだため、薄い血の味が口の中に広がった。

藤堂澄人は痛みで眉をしかめたが、九条結衣を放す気配はなく、むしろ彼を虜にしたこのキスを更に深めた。

この女性は彼の毒だった。一度中毒になると、これほどの年月経っても断ち切れない。

この時、赤ワインの後味が出てきて、口の中の血の味と相まって、九条結衣は更に気分が悪くなった。

彼女は藤堂澄人を押しのけ始め、一回一回力を増していった。

藤堂澄人は九条結衣の顔が真っ赤になっていくのを見て、心が再び締め付けられるような思いになった。彼女が泣きそうな目で自分を睨むのを見て、藤堂澄人は惜しむように彼女を放した。

キスで腫れ上がった九条結衣の唇を見て、藤堂澄人は先ほどの興奮で彼女の気持ちを無視してしまったことに気付いた。

彼女が不満げな表情で自分を睨み、強い非難の眼差しを向けるのを見て、藤堂澄人は思わず笑みを浮かべた。

手を上げて優しく彼女の頭を撫でると、柔らかな髪が彼の手のひらを撫で、まるで彼の心をくすぐるかのように、そわそわとした甘い痺れを感じた。

「ごめん、奥さん」