512.愛ゆえの叱責

彼女の前に歩み寄り、しっかりと包まれた首を見つめながら、昨夜の自分の傑作を思い出し、藤堂澄人の目の奥に、満足感と少しの得意げな表情が浮かんだ。

「もう少し寝ていれば?」

昨夜のことを思い出し、目の前のこの獣のような男の際限のない求めに、今は相手にしたくもなく、彼に鋭い視線を向けた後、「喉が渇いた」と言った。

声を出すと、ひどく嗄れていた。

昨夜の叫び声が……

最初は歯を食いしばって、声を出さないように我慢できていたのに、後半になると、この人は……本当に我慢の限界を超えさせた!

この極端に嗄れた声に、九条結衣は再び否応なく昨夜のことを思い出し、顔色がさらに暗くなった。

藤堂澄人も彼女の非常に嗄れた声に気付き、昨夜のことを思い出して、眉目が柔らかくなった。九条結衣の険しい顔色に向かって、優しく言った:

「ごめん、昨日は……少し制御を失ってしまった」

「よく言うわ!」

声があまりに嗄れていたため、今この時怒っていても、その声には少しも威圧感がなく、むしろ人の心をくすぐるような甘えと嗔りが加わり、藤堂澄人の心は再び華やいだ。

九条結衣の髪を撫でながら、振り向いて彼女のために水を一杯注いで渡し、「次回は自制するよ……痛っ!」

言葉が終わるや否や、九条結衣が恥ずかしさと怒りで、彼の脛を強く蹴り、痛みで声を上げさせた。その後、哀れっぽく九条結衣を見つめ、「お前……」

「黙って!」

声は相変わらずひどく嗄れていて、彼女は頭を下げて勢いよく水を半分以上飲み、やっと喉の渇きが収まった気がした。

まだ幼く、哀れで、無力な様子を装っている某獣を睨みつけ、九条結衣は再び歯がゆい思いをした。

まだ次回なんて考えてる?夢見すぎ!

昨日は彼に心を迷わされただけ。同じことが二度と起こるはずがない。

「パパ、ママ!」

二階の階段の入り口から、九条初の声が聞こえた。

二人は同時に彼の方を見た。眠そうな目をこすりながら、階段の入り口に立って不安そうに二人を見ている彼を見て、「喧嘩してたの?」

九条結衣二人の表情が少し固まった後、九条結衣が先に口を開いた:「違うの、パパとママは遊んでただけよ」

そう言いながら、さりげなく藤堂澄人を押しのけ、急いで階段を上がっていった。

先ほどの奥さんに睨まれた一瞥を思い出し、藤堂社長の心は甘く溶けた。