しばらくすると、藤堂澄人は香ばしい匂いの漂うステーキを二皿持って、目尻に笑みを浮かべながら彼女の方へ歩いてきた。
「食べてみて」
九条結衣は目の前の美しく盛り付けられた洋風の朝食を見つめた。色合いが食欲をそそる組み合わせだった。
味はまだ分からないが、見た目は確かに素晴らしかった。
向かいの人の期待に満ちた眼差しを見て、九条結衣はナイフとフォークを手に取り、肉を一切れ切って口に運んだ。口に入れた瞬間、一瞬固まり、すぐに目に驚きの色が浮かんだ。
ステーキを焼くのは一見簡単そうに見えるが、実は非常に技術を要する作業だ。
火加減を適切に調整するだけでなく、肉全体を均一に柔らかく焼き上げなければならない。この点において、藤堂澄人は完璧に成功していた。
そして、ステーキにかけられた黒コショウソースは、彼女が見間違えていなければ、ステーキに付属の既製品ではなく、藤堂澄人が自作したものだった。