518.甘い言葉を並べる口

その考えを、彼は隠さずに尋ねた。「僕のことが寂しくなるの?大丈夫、二、三日で戻ってくるから」

そう言いながら、手を上げて彼女の髪を撫で、目の奥の笑みが深くなった。

九条結衣は、彼のこの色気たっぷりな質問に顔を曇らせた。

この人は何でも彼女が寂しがっているとか、心配しているとか、恋しがっているとかいう話題に持っていかないといけないの?

頭の上で遊んでいるその手を払いのけながら、不機嫌そうに言った。「あなたのことなんか寂しくないわ。藤堂グループの問題が気になるだけよ」

説明した後で、この説明が不適切だと気づいた。きっとこの人はまた、これを題材に何か言い出すに違いない。

案の定、彼女の言葉が終わるや否や、藤堂澄人の機嫌の良さそうな軽い笑い声が耳に届いた。「藤堂グループは僕のものだよ。藤堂グループを気にかけるということは、つまり僕のことを気にかけているということじゃないか」

そう言いながら、手を伸ばして九条結衣の体を優しく抱きしめ、声には控えめな喜びが滲んでいた。「結衣、僕のことを心配してくれてありがとう。とても嬉しいよ」

九条結衣は彼の腕の中で気にも留めずに口を尖らせ、彼を押しのけようとしたが、耳元で彼の低い溜息が聞こえ、それは何となく寂しげで、結果として彼女は彼を押しのける動作を止めてしまった。

冷たく言い放った。「藤堂グループは私たちの息子のものだって言ったじゃない?心配するなら息子のことを心配するのよ。あなたのことなんか心配しないわ」

藤堂澄人は唇を緩ませ、彼女の言葉の中の「私たちの息子」という言葉を聞いて、心が温かくなった。

さらに、先ほど九条結衣が彼を押しのけようとしたのに最後には止めたことを思い出し、彼の気分は一層良くなった。

顔を結衣の肩に埋め、飼い主の前で甘える子犬のように、こもった声で言った:

「結衣、君から離れたくないよ」

九条結衣:「……」

この畜生、ここで恋愛ドラマを演じているわね。

九条結衣がもうふざけないでと言おうとした時、突然息子の無邪気な声が聞こえた。「パパ、ママに追い出されちゃうの?」

息子の声を聞いて、九条結衣は一気に藤堂澄人を押しのけ、まだ少し不満げな表情を浮かべる彼を睨みつけた。

藤堂澄人は目の前で邪魔をしてきた小僧を見下ろし、心の中で憤慨した。