一家三人が住宅地から出てきて高級車に乗り込むのを見て、人々の九条結衣に対する見方が変わった。
愛人にも上下があるもので、藤堂澄人の愛人になれるなんて、一生正妻になれなくても、多くの人には及びもつかないことだった。
あの目がくらむようなベントレーの限定モデルを見てみろ。彼らの人生で目の保養にしかならないだろう。乗るどころか、触れるのさえ、身の破産を恐れるほどだ。
週末の遊園地は、前回の中秋節の休みの時と変わらないほど混んでいた。
寒い日でも、遊びに来る人は少なくなかった。
車が遊園地の入り口に停まった。前回、九条結衣の車で来た時は、それほど目立たなかった。
しかし、全国でも二台とない限定ベントレーが停まると、遊園地の入り口で多くの人がこの車について話し始めた。
車から降りてきた一家三人を見て、人々は思わず深いため息をついた。
この一家三人の容姿は、この車以上に目を引くものだった。
なんと!藤堂澄人だ!!!
次々と藤堂澄人だと気づいた人々が、こっそりスマートフォンを取り出して写真を撮り、車と人をツイッターに投稿しようとした。
しかし、投稿してから2秒も経たないうちに自動的に削除されていることに気づいた。
信じられない人がもう一度投稿してみたが、同じ結果になり、さらに驚いた。
この藤堂澄人の手腕はすごすぎる、こんなに短時間で投稿を削除できるなんて?
彼らが知らないのは、前回九条初がトレンド入りして以来、彼が某SNSに特別な注意を払い、彼のプライベートに関することは一切ツイッターに掲載させないようにしていたことだった。
だから彼らの投稿はすぐに削除されたのだ。
多くの人が以前のトレンド入りしたツイートを見ていたが、その時の写真には藤堂澄人と私生子しか写っておらず、愛人は写っていなかった。今回、彼らは藤堂澄人の謎の愛人でネットの注目を集めようと思っていたが、まさか投稿がこんなに早く削除されるとは。
人々が何を考えているのか、藤堂澄人夫妻は知る由もなく、息子と一緒に園内に入り、各アトラクションを楽しみ始めた。
前回のジェットコースターでの恐ろしい経験以来、九条結衣はここのどんなスリル系アトラクションにも近づきたくなかった。