彼女は藤堂グループの運営に関わったことはなかったが、藤堂グループがどれほど巨大な財閥であるかは知っていた。
藤堂グループは国内外の様々な産業に携わっており、傘下には大手の軍需企業、不動産会社、金融、ゲームなどがある。
経済に関係するものなら、藤堂グループは全て手がけていた。
その豊富な資金力と人脈は軽視できないものだった。
このように人脈も資金力もある大企業が、アメリカの一つの政府プロジェクトを解決できないというのは、明らかに誰かが意図的に藤堂グループに対抗しようとしているということだった。
しかも、相手の実力は藤堂グループと互角だった。
藤堂グループには及ばないかもしれないが、ちょっとした工作くらいはできる可能性は十分にあった。
小悪魔は閻魔様より厄介だという道理を九条結衣も理解していた。そうでなければ、あの時の藤堂澄人も策略にはまり、首謀者が誰なのか最後まで分からなかったはずがない。
そう考えながら、九条結衣は眉をひそめ、心に何となく不安が芽生えてきた。
会議中の藤堂澄人は、自分に向けられた視線に気づき、無意識に顔を上げ、九条結衣の不安げな瞳と目が合った。
会議中の厳しく深い表情を和らげ、九条結衣に優しい笑みを向けると、会議の主導権を松本裕司に譲り、自身は会議を終了した。
パソコンを閉じ、ソファから立ち上がって彼らの方へ歩み寄った。
彼の笑顔を見て、九条結衣は一瞬戸惑った。先ほどの会話の後、彼が怒って冷たい態度を取ると思っていたのに、まさか……
九条結衣は彼を一瞥し、複雑な心境になった。
九条初の手を引いて階下に降りると、小さな子供は嬉しそうに藤堂澄人の前に駆け寄り、彼の足にしがみついて、目を輝かせた。
「パパ、今日は日曜日だから、遊園地に行っていい?」
「いいよ。初は先に朝ごはんを食べて、食べ終わったらパパとママと一緒に遊びに行こう。」
それを聞いた初は嬉しそうに頷き、自分でダイニングルームへ行って朝食を食べ始めた。
息子がダイニングテーブルで朝食を食べる様子を見ていた九条結衣は視線を戻し、藤堂澄人の先ほどのビデオ会議を思い出して、少し躊躇した後で尋ねた。「会社で問題が起きたの?」
藤堂澄人は一瞬驚いたが、すぐに先ほどの会議のことを思い出した。彼女は聞いていたのだろう。