「何があったの?」
九条結衣は先ほど起きたことを、藤堂澄人に説明した。
藤堂澄人の視線は、九条結衣がおもちゃの剣で傷つけられた手の甲に向けられ、その瞳の奥の冷たさが一層深まった。
「まず傷の手当てをしよう」
藤堂澄人が九条結衣の手を引いて歩き出そうとすると、その数人は絶好の恐喝の機会を逃すまいと、すぐさま二人の行く手を遮った。
「どうした?賠償もせずに行くつもりか?」
彼らの一行は男が四人、女が一人、それに子供が一人だった。
藤堂澄人の装いは控えめながらも、どこか洗練された贅沢さが漂っており、この男が相当な金持ちだということは一目瞭然だった。
こんな絶好の機会を、彼らが逃すはずがなかった。
藤堂澄人は今、自分の妻が虐められたことで心に溜まった怒りの炎の捌け口を探していたところ、その男がまた殴られに来るようなものだった。