481.奥さんと一緒に頑張ろう

この問題は大したことないように聞こえるが、子供との時間を失った藤堂澄人にとって、心の中は複雑な思いだった。

向かい側に立つ息子を見つめると、その喜びに満ちた表情が彼の目を刺すようだった。

母親のお腹の中で成長し、生まれてから今の三歳になるまで、本来なら彼はずっと側にいるべきだった。

息子の三年間の成長を見逃したことは、彼の人生で永遠に取り戻せない後悔となった。

目の奥の暗さを隠し、珍しく機嫌よく丁寧に答えた。「息子が喜んでいるので、私もこの機会に一緒に参加できて嬉しいです。息子を失望させないよう、今日は優勝を勝ち取ってきます。」

彼が話している間、ずっと九条結衣を見つめていたので、普段の正式なテレビインタビューの時のような高慢な態度ではなかった。

彼のこの答えに、他の人は仕事が忙しくて息子と過ごす時間がないから、この機会を得て喜んでいるのだと思っただけだった。

結局のところ、巨大な財団を率いて不敗の地位を保ち続けることは、誰にでもできることではない。

九条結衣は藤堂澄人の視線が自分から離れないのを感じていた。その熱い感情が目から溢れ出そうだった。

彼女は振り向かなかったが、耳が彼の視線で熱くなり、知らないふりをするしかなかった。

撮影クルーは藤堂澄人が自分の妻をじっと見つめているのを見て、彼らに構う余裕がないことを悟った。

もし彼らがさらに質問を続ければ、この大物が怒り出すことは明らかだったので、彼が質問に答え終わると「藤堂さん、藤堂奥様、頑張ってください」と言って、他の保護者のインタビューに向かった。

藤堂澄人は九条結衣をずっと見つめていたので、彼女の白い耳たぶが徐々に赤くなり、最後には耳の付け根まで広がっていく様子を見逃さなかった。心の中で密かに笑った。

妻は自分が見ていることを知って、恥ずかしがっているに違いない。

そう思いながら、思わず彼女の耳元に身を寄せて「妻よ、耳に何か色がついているようだけど?」

「色?」

九条結衣は無意識に手を上げて耳たぶに触れ、いつ色がついたのかわからなかった。

手が耳たぶに触れた瞬間、藤堂澄人に掴まれ、意地悪な笑みを浮かべながら「赤くなってるよ」と言った。

彼のその笑顔を見て、九条結衣は自分がまた彼にからかわれたことを悟り、「赤い」という言葉の意味を理解して、顔色が一気に曇った。