528.奥様が恥ずかしがっている

運転手がこのように気を利かせてくれたのを見て、藤堂澄人は満足げに口元を緩め、横にいる買い物のおまけのような存在感の薄い小さな「電球」を完全に無視し、目に笑みを浮かべながら九条結衣を見つめた。

九条結衣は彼にそのように見つめられ、居心地が悪くなったが、次の瞬間、藤堂澄人にふんわりと抱きしめられた。

九条.買い物のおまけ.電球.初：「？？？」

パパとママはなぜ抱き合っているの？

パパって恥ずかしい、こんな大人なのにママに抱っこしてもらいたいなんて。

初は眉をひそめ、目には嫌悪感が満ちていた。

しかし、彼はすでに実の父親に完全に無視され、存在感は皆無だった。

「結衣、ありがとう」

藤堂澄人のこの感謝の言葉は、特に重みを持って語られ、抱きしめられている九条結衣の体が一瞬硬くなり、彼の突然の感謝の理由が分からなかった。

「僕のことを心配してくれて、そして僕にもう一度君の側に立つチャンスをくれて、ありがとう」

九条結衣は彼がこのことを言おうとしていたとは思わず、目に驚きの色が浮かんだ。

九条結衣は藤堂澄人の言葉に返事をしなかった。実際、彼女には藤堂澄人の言葉にどう返事をすればいいのか分からなかった。

腕の中で硬くなった彼女の体を感じ、返事がないことに藤堂澄人は気にしなかった。

今や彼女が必死に彼を押しのけようとしないことだけでも、彼にとっては恩寵だった。

しばらくして、九条結衣は彼を自分の前から押しのけ、顔には気づきにくい薄い赤みが残っていた。

「子供の前でそんな変なことするのはやめて」

彼女は藤堂澄人の視線を避けながら、落ち着いた声で言った。

買い物のおまけの初も、パパを嫌そうな目で見た。

藤堂澄人は少し困惑した様子で、自分の妻を抱きしめることがどうして変なことになるのだろうか？

彼は反論しようと唇を動かしたが、九条結衣の頬の薄い赤みを見た瞬間、止めた。

どうやら妻は人前で恥ずかしがっているようだ。

そう考えると、藤堂澄人は横にいるおまけの部外者を容赦なく睨みつけた。

無実の初は、なぜパパが突然こんなに不親切な目つきで睨むのか分からず、明るい大きな目をぱちくりさせた。

九条結衣の視線は、ずっと車窗の外に向けられていた。この数日間の藤堂澄人との付き合いを考えると、悪くはなかった。

でも、それだけのことだった。