その時、彼はすぐに言った。「ママ、ここで休んでいてね。僕とパパがトロフィーを獲ってくるところを見ていて、応援してね。」
九条結衣は藤堂澄人の得意げな笑顔を睨みつけ、今の自分の曲がりにくい膝のことを考えると、やはり無理はできなかった。
それに、比べてみれば、藤堂澄人の方が勝つ可能性は確実に高かった。
息子が優勝して喜んでくれれば、自分が参加するかしないかはどうでもよかった。
「わかったわ、九条初、頑張ってね!」
九条結衣は身を屈めて息子の頬にキスをし、励ましの意味を込めて大きな抱擁をした。
九条結衣の息子と自分に対する態度の違いを見て、藤堂澄人は少し妬ましく感じた。
さりげなく息子を押しのけ、彼は好意的な笑顔を浮かべながら九条結衣を見て言った。「結衣、僕もキスとハグで励ましてほしいな。」