藤堂澄人は今の気持ちを何と表現すればいいのか分からなかった。五臓六腑が絞られるような痛みが、瞬く間に全身に広がっていった。
彼女が自分を信用していないことは分かっていたが、後で避妊薬を飲むとは思ってもみなかった。
目の奥がしみるように痛み、呼吸をするたびに心臓が引き裂かれるような痛みを感じた。
手の中の薬の箱は、握りしめられて形が歪んでいた。
背後から浴室のドアが開く音が聞こえ、藤堂澄人の体が一瞬硬直し、ゆっくりと振り返った。
九条結衣が浴室から出てきた時、藤堂澄人が地面に半蹲みになって、彼女の上着と、そして……
彼が手に握りしめている薬の箱を見て、九条結衣の表情が一瞬変化した。浴室のドアの前に立ち止まったまま、緊張のためか両手を拳に握りしめていた。
藤堂澄人は立ち上がって彼女に向かって歩き出した。大きな体が、一歩一歩九条結衣に近づいていく。
彼が近づいてくるのを見て、九条結衣は何故か心が慌ただしくなった。まるで自分が取り返しのつかない罪を犯したかのように。
藤堂澄人の足取りは、彼女の前で止まった。
大きな体が、彼女の目の前に影を落とした。
彼は手を九条結衣の前にゆっくりと差し出し、手のひらを開いた。歪んだ薬の箱に書かれた「避妊薬」の文字が、異様に目に突き刺さるように見えた。
「これが今日買った消炎薬か?」
藤堂澄人は掠れた声で尋ねた。彼の目の縁が赤くなっており、話す時の声も少し震えていた。
九条結衣は目を伏せ、唇を固く結んだまま一言も発せず、体の横で握りしめた拳をさらに強く握りしめた。
「俺の子供をもう一人産みたくないのか?」
藤堂澄人は再び尋ねた。声は先ほどよりもさらに掠れていた。
九条結衣はまだ答えなかった。何度も言葉が喉元まで出かかったが、口に出すことができなかった。
藤堂澄人はもう質問せず、ただ静かに彼女を見つめていた。心の痛みは、さらに増していった。
一瞬の間、周りの空気は耐え難いほど重苦しくなった。藤堂澄人が目の前に立っているその圧迫感で、九条結衣は息苦しさを感じた。
長い沈黙の後、彼女はまるで全ての勇気を振り絞るかのように、口を開いた。「はい」
彼女の声は非常に小さく、この静かな環境でさえ、かろうじて聞こえる程度だった。