「まだよ、飛行機から降りる前に戻ってきたの」
藤堂澄人も彼女に隠し事をせず、彼女の柔らかい体を抱きしめながら、甘えるように言った。「遠くから戻ってきて、往復26時間も飛行機に乗ったんだ。僕に何かご褒美くれない?」
九条結衣は目を上げて冷ややかに彼を見つめ、また彼が甘えようとしているのを知って言った。「大恩は言葉にせず」
「その通りだね。お礼を言う必要はない、キスしてくれるだけでご褒美になるよ」
そう言いながら、藤堂澄人は厚かましく顔を近づけてきたが、九条結衣にすぐさま手で押しのけられた。「厚かましい」
「じゃあ、唇にキスして」
そう言って、また唇を近づけてきた。九条結衣が手を上げて彼の口を押さえようとした時、手首を藤堂澄人に掴まれ、すぐさま彼女の唇にキスをされた。