小林由香里がようやく追いついたとき、藤堂澄人が既に助手席のドアを開けて座り、運転手が後部座席のドアを開けて彼女を待っているのが見えた。
小林由香里は彼が助手席に座ったのを見て、少し残念に思った。隣に座れると思っていたのに。
「小林さん、どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女は運転手に優しくお礼を言って、車内に座った。
数千万円の限定版高級車。小林由香里は、自分の人生でこんな車に触れることさえできないと思っていた。まして乗ることなど、運転手がわざわざドアを開けてくれることなど。
車がゆっくりと病院を離れ、小林由香里は車内で高価な本革シートに触れながら、お金の匂いが漂う空間に心を奪われていた。
古代の帝王のような生活、彼女もそれが欲しかった。
助手席に座る男性に目を向けると、端正な容姿、完璧な横顔が目に入った。