もっと褒めて

「本当にあなたが作ったの?」

九条結衣は少し信じられない様子だった。彼との三年間の結婚生活で、藤堂澄人がキッチンに入るところを見たことがなかった。それに、藤堂家には大勢の使用人がいて、様々な料理を得意とするシェフだけでも何人もいたので、藤堂澄人が料理をするなんて考えもしなかった。

まさか藤堂澄人が本当に料理ができるとは思いもよらなかった。

朝の洋食は悪くなかったけど、まさか中華料理もこんなに食欲をそそるように作れるとは思わなかった。

目の前の材料はシンプルながら、見た目も香りも味も申し分ない海鮮麺を見て、九条結衣は思わず箸を手に取った。

「もちろん俺が作ったさ。お前が見ていたじゃないか、忘れたのか?」

藤堂澄人は彼女の向かいに座り、その大きな体を突然彼女の方に寄せ、いつもの深い瞳に今は少し茶目っ気のある笑みを浮かべていた。

「俺が作っているとき、お前はずっと褒めてくれていたじゃないか」

九条結衣は全く記憶にないが、藤堂澄人のからかうような、そして甘い雰囲気を含んだ眼差しを見て、この男がまた何か良からぬことを言い出すに違いないと察し、無視して箸を取り食べ始めた。

一口食べた瞬間、彼女は動きを止め、目が思わず輝いた。

まさか...まさか本当においしい。

表情には出さなかったものの、彼女の目に浮かんだ満足げな様子は藤堂澄人の目に留まり、彼の心は喜びで満ち溢れた。

「美味しい?」

藤堂澄人が口を開き、まるで「さあ、褒めてくれ、準備はできている」といった様子だった。

おそらく本当に空腹だったのだろう、九条結衣は夢中で食べていたが、突然向かいの人物からそんな言葉が飛び出してきて、少し不機嫌そうに目を上げ、向かいの男を見た。

藤堂澄人が褒められるのを待っているような表情を見せているのに気づき、思わず口角が引きつった。「まあまあね」

「まあまあ、だけ?」

藤堂澄人は眉を上げ、明らかに彼女の返事に満足していない様子で、「もっと褒めてよ」と言った。

九条結衣は眉をひそめ、目の前のこの人が、記憶の中の天山の雪蓮のように冷たかった男と同一人物なのかどうか、ますます疑わしく思えてきた。

「どんな風に褒めてほしいの?」

彼女は面倒くさそうに口を開き、箸を使って丼の麺を食べ続けた。