582.全てを1人で抱え込まないで

彼が突然自分の生活から消えてしまった空虚な感覚は、一人で静かな部屋に向き合っているときに特に強くなる。

彼は彼女に、「主人」という言葉を打ち込んだ時、何を言いたかったのかと尋ねたが、実は彼女自身にもわからなかった。

ただ、彼のLINEのチャット画面を見て、メッセージが一つもないのを見た時、心が寂しくなっただけだった。

「主人」という言葉が、なぜか知らないうちにチャット画面に入力されていた。

藤堂澄人は、腕の中で暴れていた女性が突然黙り込んだのを感じ、少し心配そうに眉をひそめた。

何か言おうとした時、腕の中から九条結衣の低い声が聞こえた。「藤堂澄人。」

「ん？」

フルネームで呼ばれて、藤堂澄人は内心あまり嬉しくなかったが、それでも優しく返事をした。

「私、弱くなった気がする。」

藤堂澄人：「……」

彼女が黙り込んだのは、これが理由だったのか？

「弱くなるのはいいことだよ。弱くなれば、俺が役に立てるからね。」

藤堂澄人は軽く笑いながら、彼女の滑らかな背中を撫でながら言った。「どんなことがあっても、まず俺に解決させてほしい。一人で全部抱え込まないでほしい。そうされると辛いんだ。」

「私にはできる。」

腕の中の九条結衣は、眉をひそめ、反射的に反論した。

藤堂澄人は笑って、手を上げて軽く彼女の頭をつついた。

「できるのは分かってる。でも、そんなに頑張ってほしくないんだ。俺の奥さんがそんなに苦労するのは見たくない。」

九条結衣は今回は何も言わず、ただ静かに彼の胸に寄り添っていた。まるで従順な猫のように、彼の胸元で擦り寄った。

このような無意識の仕草が、藤堂澄人の心を水のように溶かしていった。

30分ほど休んでから、九条結衣はようやく動き出し、彼の体から降りた。

動いた途端、体中が散り散りになったかのように、酸っぱく痛かった。

藤堂澄人と自分の体に残された愛の痕跡を見て、情欲が引いた後の理性は、直視できないほどの恥ずかしさだけを残した。

一方、藤堂澄人は奥様の前で、まったく心理的な負担なく露出していた。彼女が眉をひそめて動けない様子を見て、心配そうにすぐに近寄って頬にキスをし、地面に落ちていた服を適当に身につけた。

「お風呂に連れて行くよ。」