言い終わると、九条結衣の怒りに満ちた視線の中で、外着を脱ぎ捨て、バスタブの正面にあるシャワールームに入った。
水蒸気越しに男の大きな体が朧げに見え、鍛え上げられた体つきが水蒸気に包まれて見え隠れする様子は、それを見ているだけで九条結衣の喉が渇くほどだった。
不自然に視線を逸らし、彼女はバスタブに寄りかかって目を閉じ、もう見ないようにした。
彼女は...うん、自制が効かなくなるのが怖かった。
湯加減が丁度良く、疲れも相まって、九条結衣の瞼が少しずつ重くなってきた。
藤堂澄人がシャワーを終えて出てきた時、九条結衣はすでにバスタブで眠り込んでいた。
九条結衣が風邪を引かないように、藤堂澄人はバスタオルで適当に体を拭くと、九条結衣を湯船から抱き上げた。
バスタオルで丁寧に拭き、服を持ってきて着替えさせた。本当に疲れ果てていたのか、この一連の動作の間、九条結衣は目を覚まさなかった。
藤堂澄人の心は満たされると同時に、心配でもあった。
深夜に帰宅した時、ネットで二人の関係を公表したことで彼女が問い詰めてきたり、露骨に不機嫌な態度を見せたりするのではないかと心配していた。
しかし彼女は何も言わず、むしろこんな素敵なサプライズまでくれた。
彼がいない数日間、彼女も彼のことを想っていたと分かって嬉しかった。
身を屈めて彼女の頬にキスをし、思わず彼女を強く抱きしめ、耳元で囁いた。「ありがとう、愛してる」
二晩眠れていなかったが、今は愛する妻を抱きしめ、ベッドに触れた途端、満足げに眠りについた。
九条初は朝早く目を覚まし、パパがキッチンで朝食を作っているのを見て、嬉しそうに駆け寄った。
「パパ、おかえり!」
「シーッ!ママはまだ寝てるから、初ちゃんは声を小さくして、ママを起こさないようにしようね」
九条初は真剣に頷いた後、眉をひそめて心配そうに言った。
「ママ、きっと昨日の夜遅くまで仕事して疲れちゃったんだね。パパ、これからはママをこんなに疲れさせないでね?」
子供の無邪気な言葉も、ある人の耳には別の意味に聞こえてしまう。
昨夜の妻の「仕事」のことを思い出し、少し心虚になった。
「コホン!」
少し取り繕うように軽く咳払いをして言った。「パパはこれからなるべくママを疲れさせないようにするよ」