藤堂お婆様は元気がなかったのですが、その言葉を聞いて、瞬時に両目を開き、虚ろだった瞳に輝きが宿りました。
「坊ちゃま?私の可愛い曾孫の初なの?」
藤堂澄人は初を抱きながら足早に近づき、お婆様のベッドの傍に来ると、彼を下ろしました。
来る前に、九条結衣は初に曾祖母に会いに行くことを話していたので、初はベッドの傍に来るとすぐに、おとなしく言いました:
「ひいおばあちゃま、初が会いに来ましたよ」
お婆様は大変喜び、急に元気になったように、すぐに山本叔母さんを呼んで起こしてもらおうとしました。
藤堂澄人は前に出て、お婆様を支えて起き上がらせ、クッションに寄りかからせました。
執事が言った通り、お婆様は愛しい曾孫を見ると、まるで病気が全て治ったかのように喜び、初の小さな手を握って、目尻を下げて笑いました。
「本当に私の宝物の曾孫が来てくれたわね、よく見せてちょうだい」
藤堂お婆様は可愛らしい顔を優しく撫でながら、とても嬉しそうでした。
「この可愛い顔は、お父様が小さい頃にそっくりね」
「ひいおばあちゃま、初と父様とどっちが可愛いですか?」
初は目を輝かせながら、甘えた声で大人びた口調を交えて尋ねました。
お婆様はそれを聞いて、とても楽しそうに笑いました。「もちろん私の宝物の初が一番可愛いわ。お父様は小さい頃からいつも仏頂面で、私たちの初みたいに愛らしくなかったわよ」
「父様は今でもよく仏頂面なんです。特に母様が初のことを父様より可愛がってるのを見た時なんかは」
九条結衣:「……」
藤堂澄人:「……」
この小生意気な!
「ひいおばあちゃま、父様はもうあんな年なのに、どうして私と母様の取り合いをするんでしょう。全然恥ずかしくないみたいです」
「あはははは……」
初のその嫌そうな口調と、大人びた言葉遣いに、お婆様は更に楽しそうに笑いました。
味方がいると分かっているからか、初は父様の怖い顔を全く恐れず、お婆様の側で甘えて可愛らしく振る舞いました。
「父様はいつも母様を抱きしめてるし、母様にキスばっかりして……」
「こほん!!!」
それまで息子がお婆様の前で甘えるのを見守っていた九条結衣も、さすがに聞き過ぎて大きく咳き込みました。
このまま話させていたら、彼女と夫の秘密まで全部暴露されてしまいそうでした。