589.物を見て人を思う

「はい、はい、大奥様、ゆっくりお休みになってくださいね。九条初はお目覚めになってからまたお会いに参ります」

「ええ、ええ……」

老夫人が眠りについた後、夫婦は九条初を連れて部屋を出た。

藤堂澄人の主寝室は普段から掃除が行き届いていたので、特別な準備は必要なかった。

ただ、九条初のことが問題だった。

「旦那様、坊ちゃまは別のお部屋をご用意いたしましょうか、それとも旦那様と奥様と同じお部屋でよろしいでしょうか」

「パパとママと一緒の部屋はいやだ」

藤堂澄人夫妻が口を開く前に、九条初が先に言い出した。

「山本叔母さん、こぶたが言ってたの。パパとママと一緒に寝たら妹が生まれないって。別の部屋を用意してください」

この生意気な坊や、本当に思ったことをすぐ口にする。

特に何でも知っているこぶたが毎日妹の作り方について話し合うものだから、九条初くんは妹のために一生懸命パパとママを引き合わせようとしているのだ。