藤堂澄人は九条結衣の髪に顔を埋めて、むっつりと不満を漏らした。「僕のことを気にかけてくれないような気がするんだ」
九条結衣:「……」
「藤堂澄人、もういい加減にして!」
「まだまだ!」
頭上から聞こえてくる低い声に、九条結衣は藤堂澄人の抱擁がさらに強くなるのを感じた。
「じゃあ、言ってよ。僕のことを気にかけてくれてるの?」
まるで子供のように、しつこく迫ってきた彼の声を聞いて、九条結衣は思わず蹴飛ばしたくなった。
「藤堂澄人……」
「答えて」
むっつりとした声には、頑固な強引さが混ざっていて、九条結衣から明確な答えを引き出さなければ気が済まないようだった。
「気にかけてるわよ、気にかけてる。これでいい?早く離してよ」
藤堂澄人が彼女の答えに満足したのかどうかは分からないが、本当に彼女から手を放した。