620.奥様は薬局へ行った

写真の角度から見ると、盗撮されたものだと思われる。

これは……彼女じゃないか?

彼女はこの写真が撮られた場所を覚えている。

あの時、彼女は14歳で、クラスメートと一緒に街頭でボランティア活動をしていた。どうして……撮られたのだろう?

藤堂澄人のオフィスで、彼女が誤ってこれを倒してしまった時のことを思い出した。藤堂澄人は慌てて写真を引き出しに入れ、松本裕司のものだと言った。

あの時、藤堂澄人をそれほど慌てさせたのは、きっと彼の想い人に違いないと思った。

表面上は平静を装っていたものの、内心では少し妬ましく感じていた。

でも、あの時の彼女は藤堂澄人の元妻でしかなく、辛くても仕方がなかった。

藤堂澄人が彼女の様子がおかしいことに気づいて、なぜ急に冷たくなったのかと尋ねてきたことも覚えている。