593.藤堂瞳は災いそのもの

先ほど藤堂瞳が外で発した聞くに堪えない罵声を、彼女も聞いていた。それが植田涼の耳に入ったとき、どんな思いを抱いたのだろうかと考えた。

植田涼は名家の坊ちゃん育ち。良い家庭教育と教養を受けた彼には、藤堂瞳のような市井の暴漢のような言葉遣いは受け入れがたいだろう。

時間が経つにつれ、一旦矛盾が激化すれば……

九条結衣は心の中でため息をついた。

藤堂瞳の暮らしぶりについて、九条結衣は気にかけなかったが、ただ植田涼のことが少し気の毒に思えた。

しかし、所詮は他人の事。彼女には口を出す資格も権利もなかった。

「おばあちゃん、ありがとう。私は食べましたから。おばあちゃんが病気だと聞いて、瞳を連れて様子を見に来ました。」

藤堂瞳のことを口にすると、植田涼の眉間が、さりげなく寄った。