先ほど藤堂瞳が外で発した聞くに堪えない罵声を、彼女も聞いていた。それが植田涼の耳に入ったとき、どんな思いを抱いたのだろうかと考えた。
植田涼は名家の坊ちゃん育ち。良い家庭教育と教養を受けた彼には、藤堂瞳のような市井の暴漢のような言葉遣いは受け入れがたいだろう。
時間が経つにつれ、一旦矛盾が激化すれば……
九条結衣は心の中でため息をついた。
藤堂瞳の暮らしぶりについて、九条結衣は気にかけなかったが、ただ植田涼のことが少し気の毒に思えた。
しかし、所詮は他人の事。彼女には口を出す資格も権利もなかった。
「おばあちゃん、ありがとう。私は食べましたから。おばあちゃんが病気だと聞いて、瞳を連れて様子を見に来ました。」
藤堂瞳のことを口にすると、植田涼の眉間が、さりげなく寄った。
もし以前の妻が何度も義姉を攻撃したのは、単純に木村靖子に騙されたためで情状酌量の余地があったとしても、今夜の彼女の言葉は、たとえ弁解しようとしても、とても面目が立たないものだった。
彼は薄々感じていた。自分の妻は、最初に知り合った時のような純粋で素晴らしい人間ではないのだと。
これまでこのような一面を見せなかったのは、以前の彼女にはそれを表す機会がなかっただけなのだ。
藤堂家のお嬢様として、皆が我慢して譲っていたから、今日のような醜態を晒すことはなかったのだ。
そして藤堂家が彼女を追い出した理由について、義姉との関係も多少あるだろうが、彼女があまりにも度を越した行動をとらなければ、おばあちゃんと義兄がここまで極端な措置を取ることはなかったはずだと思った。
おばあちゃんは植田涼の困惑した表情を見て、箸を置き、ため息をつきながら言った:
「域、おばあちゃんがなぜ藤堂瞳を家に入れないのか不思議に思っているでしょう?」
植田涼はおばあちゃんのその質問を聞いて、顔を上げて彼女を見つめ、少し考えてから口を開いた:
「おばあちゃん、瞳が何か非常に悪いことをして、おばあちゃんを怒らせたんですか?」
おばあちゃんは植田涼に隠すことなく、あの日藤堂瞳が藤堂家に来て、なぜ木村靖子を牢屋に入れたのかと兄を責め立て、さらに常識外れな言葉を吐いたことを全て話した。
植田涼は目を見開いて驚いた。