彼女の頬にキスをして、「分かった。君の言う通りにするよ。これからはお酒を飲まないよ」と言った。
「うん、早く寝ましょう。眠いの」
「ああ」
藤堂澄人は九条結衣の隣に横たわり、一日中彼女を放っておいたことを思い出して、心が痛んだ。彼女を抱く腕に、思わず力が入った。
翌日、九条結衣は藤堂澄人と一緒に会社へは行かず、お婆様とお寺参りに付き添った。
お婆様は毎月旧暦の十五日にお寺参りをするのが習慣だった。
九条結衣が九条初を連れて戻ってきてから、お婆様は嬉しかったせいか、体調もぐっと良くなった。
「初ちゃん、お曾祖母さんと一緒にお参りしましょう。お母さんが早くあなたに妹を産んでくれるようにお願いするのよ」
九条結衣はお婆様を支えながら仏前に立ち、その言葉を聞いて苦笑いを浮かべた。
この祖孙二人は本当に、いつも彼女に子供を産ませることばかり考えている。
お婆様を膝当てに跪かせた後、九条結衣も隣に跪き、両手を合わせて敬虔にお参りをした。
お寺の全ての仏殿を参拝し終えた頃には、もう昼になっていた。
「ここの精進料理はとても美味しいのよ。お婆ちゃんと一緒に食べましょう」
お婆様は本当に嬉しそうだった。孫と孫嫁が和解し、もうすぐ可愛い女の子が生まれるかもしれないと思うと、顔に笑みがこぼれた。
「はい、いいですね」
九条結衣が快く承諾した時、彼女のスマートフォンにWeChatの通知音が鳴った。
夏川雫からのメッセージだった。
そこには、ニュースの話題のリンクが貼られていた。
九条結衣がそれを開くと、目を引く写真が彼女の視界に飛び込んできた。
個室の入り口の廊下で、明るい照明の下、近くに寄り添う二人の姿がはっきりと写っていた。
男性は女性の腕を掴み、二人は頭を下げて何かを話している。
撮影アングルが絶妙で、男性の顔がはっきりとカメラに収められていた。
彼の表情は、他の女性に対する時のような高慢で冷たいものではなかったが、かといって特別親しげというわけでもなかった。
この撮影場所も九条結衣には見覚えがあった。まさに富豪や著名人が出入りするプレステージクラブだった。
写真の男性は、彼女の夫、藤堂澄人だった。
そしてこの女性は……
「後藤霊?」
九条結衣は写真の女性も認識し、彼女と藤堂澄人が同じフレームに収まっていることに驚いた。