実際のところ、九条結衣はこのニュースをそれほど気にしていなかった。
この写真は、確かに親密そうに見えたが、後藤霊と藤堂澄人は……
九条結衣は考えれば考えるほど、そんなことはありえないと思い、写真を見た時も驚いただけで、深く考えることはなかった。
「大丈夫よ、私は平気。このニュースは後藤霊を狙ったものみたいだから、誰かが対処してくれるわ。私たちは気にしなくていいの」
九条結衣の言葉を聞いて、夏川雫は半信半疑で「どうしてあなた、後藤霊のことをよく知ってるみたいなの?」
「うん、知ってるの。心配しないで、私は大丈夫」
九条結衣の口調を聞いて、本当に大丈夫そうだと分かり、夏川雫はようやく安心して電話を切った。
その時、藤堂グループの社長室では、藤堂澄人が青ざめた顔で、かなり恐ろしい表情をしていた。
松本裕司は彼の前に立って、びくびくしていた。
珍しくこのニュースは社長を狙ったものではなかったのに、皮肉にも社長が「男性主人公」として登場してしまった。
社長はようやく奥様を取り戻したばかりなのに、こんな大きなニュースに巻き込まれてしまった。
以前、社長が特別にメディアに「注意」して、彼のプライベートな事は報道しないように言っていたのに。
メディアも従って、賢くなったようだった。
このニュースは確かに社長とは関係なく、池田夫人の後藤霊について報じただけで、社長はただ巻き込まれてトレンド入りしただけだった。
メディア関係者たちは本当に金のためなら何でもするようになって、このようなグレーゾーンまで踏み込んでくる。
もし奥様が再び社長を誤解して、まだ安定していない二人の関係がまた危機に陥れば、これらのメディア関係者は本当に職を失うことになるだろう。
「社長、メディアにニュースを取り下げるように言いましょうか?」
しばらくの沈黙の後、松本裕司は社長の怒りに耐えながら、そう尋ねた。
「必要ない!」
このニュースは、自然と誰かが対処するはずだ。彼が急いでニュースを取り下げようとすれば、かえって後ろめたいと思われてしまう。
彼が今心配しているのはそのことではなく、結衣のことだった……
彼女は……自分を信じてくれるだろうか?
藤堂澄人は薄い唇を一文字に結び、心の中で不安を感じていた。