632.妊娠中絶

九条結衣は眉をひそめながら夏川雫を見つめ、眉間の皺がますます深くなったが、彼女の要求を直接承諾せず、こう言った:

「先に横になって休んでいて。食べ物を買ってきてあげるから。」

そう言って、病室のドアを開けて出て行った。

病室を出た時、九条結衣の心境は複雑だった。

夏川雫のその子供のことについて、自分がどうすべきか分からなかった。

もし雫が田中行に子供のことを知らせたくないと固く決意しているなら、自分には何の権利があって勝手に田中行に告げることができるのだろうか?

でもその子供には田中行の血が流れているのに、なぜ彼は楽しんだだけで何の責任も取らず、雫一人にすべてを背負わせるのか。

中絶には危険が伴う。雫の今の状態で中絶したら、もし何か不測の事態や後遺症が起きたらどうするのか?