もともと冷たかった口調が、この時少し柔らかくなり、彼女は彼の胸から顔を上げて見つめ、眉をひそめながら言った。「あなたを信じているけど、あの写真は気になるわ。気にしているのよ」
藤堂澄人の表情が一瞬凍りついた。目には最初は戸惑いが浮かび、その後喜びからくる少しの困惑が見えた。
「結衣、俺は……」
「写真のことについて説明してくれるのを一日待っていたのに、どうしてそのことを話してくれないの?帰ってきていきなり意地悪な言い方をして。何?スキャンダルを起こしておいて、私が慰めないといけないの?」
九条結衣は顔を引き締めて話したが、明らかに昼間ほど冷たい態度ではなかった。
藤堂澄人は妻に叱られても、怒るどころか、むしろ嬉しくてたまらなかった。
上がりかけた口角を抑えながら、彼は九条結衣を抱きしめ、低い声で謝った。「ごめん、全て俺が悪かった。実は君を責めているわけじゃない。自分自身を責めているんだ。以前やってしまった過ちのせいで、君の前では全く自信が持てなくて、いつか俺の過去の過ちで機嫌を悪くして、君が俺を置いて行ってしまうんじゃないかって怖いんだ」