そんな素晴らしい年頃で彼に出会い、彼を愛し、彼に相応しい女性になろうと必死に努力した。
しかし、運命の悪戯で、二人は最も輝かしい時期を、すれ違ってしまった。
今、やっと過去を取り戻すチャンスを掴んだのだから、なおさら大切にしなければならない。些細な誤解で、また一度すれ違うようなことがあってはならない。
藤堂澄人は、彼女の突然の沈黙と、思わず漏れた溜息を感じ取り、胸が痛んだ。
彼女が思い出したくもない過去を思い出したのだと察し、自責の念と心痛を覚えた。
九条結衣をさらに強く抱きしめると、結衣が言った。「これからは誤解なんてしないでよ。また何も言わずに不機嫌な顔をしたら、許さないからね。」
彼女は威勢よく彼の腰をぎゅっと掴んで、声も強気だったが、藤堂澄人の耳には蜜より甘く響いた。
「もうしないよ。もし君に不機嫌な顔を見せたら、永遠に君に触れられない罰を受けることにする。」
九条結衣はようやく満足げに軽く鼻を鳴らし、藤堂澄人の胸に寄り添って黙っていた。夫婦で少し話をしているうちに、結衣は眠くなってきた。
「眠いの?」
彼女のまぶたが重くなってきたのを見て、藤堂澄人は顔を寄せて尋ねた。
「うん、寝ましょう。明日は病院に行って雫の看病をしないと。」
九条結衣は目を閉じ、うとうとしながら答えた。
夏川雫が入院している?
藤堂澄人は意地悪く眉を上げ、すぐに妻が今日病院にいた理由を理解した。
渡辺拓馬とは関係なく、妻が友達と夕食を食べると言っていたのは、おそらく夏川雫のことだったのだろう。
そう考えると、藤堂澄人の気分は一気に良くなった。
夏川雫がなぜ病気で入院したのかは、気にかける余裕もなかった。
上機嫌の藤堂社長は妻の隣で、彼女をしっかりと抱きしめていた。九条結衣はもうすっかり眠くなっていて、藤堂澄人がこうして抱きしめていても気にしていなかった。
ただ、藤堂澄人が彼女の耳元でうるさく「結衣、明日婚姻届を出しに行こう」と言うのが聞こえた。
「うん。」
九条結衣はうとうとしながら返事をしたが、聞いていたのかどうかも分からない。
藤堂澄人は気にしなかった。妻と自分の名前が再び一つの赤い証明書に載ることを考えただけで、興奮して眠れなくなった。