おばあさまは孫のおかしな行動に笑みを浮かべた。「あなたったら、どう言っても九条初の実の父親なのよ。奥さんを大事にするのは正しいけど、自分の息子をそんなに意地悪しちゃいけないわ」
藤堂澄人はおばあさまの言葉に全く後ろめたさを感じなかったが、九条結衣が渡辺拓馬と一緒にいることを考えると、心が落ち着かなかった。
「おばあさま、帰ってくる前に中村裕司さんと食事をしてきましたから、ゆっくり召し上がってください。私は先に二階に上がります」
中村裕司はA市の市長で、おばあさまも知っている人物だったため、藤堂澄人の言葉に特に疑問を持たなかった。
「そう、じゃあ九条初がおばあさまと一緒に食事をするわね」
藤堂澄人は箸を置き、ダイニングを出ると、九条結衣がすでにスリッパに履き替え、玄関から居間の方へ歩いてくるところだった。