「いいわよ。あなたは稼ぎ手で、私は美人でいるわ」
その人は「パラサイト」という心理的負担を全く感じることなく、すぐに答えた。
二人は周りに電力の低い電球が一つついているのを完全に無視して、イチャイチャし続け、傍らにいた夏川雫は、またしても「このバカップル」と罵りたくなった。
なぜ旅行に来ることを承諾したのだろう。彼女は旅行に来たのではなく、明らかに他人が独身の彼女をいじめるのを見に来ただけだった。
「釣りに行かない?」
二人が少しふざけ合った後、藤堂澄人がそう提案した。
「いいわね」
九条結衣は返事をし、横で無言で彼らを見ていた夏川雫の方を振り向いた。親友の目に軽蔑の色を見て取った九条結衣は、すぐに何かに気付き、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「雫、一緒に釣りに行かない?」