700.あなたは稼いで家計を支えて、私は美しい花のように綺麗でいるわ

「いいわよ。あなたは稼ぎ手で、私は美人でいるわ」

その人は「パラサイト」という心理的負担を全く感じることなく、すぐに答えた。

二人は周りに電力の低い電球が一つついているのを完全に無視して、イチャイチャし続け、傍らにいた夏川雫は、またしても「このバカップル」と罵りたくなった。

なぜ旅行に来ることを承諾したのだろう。彼女は旅行に来たのではなく、明らかに他人が独身の彼女をいじめるのを見に来ただけだった。

「釣りに行かない?」

二人が少しふざけ合った後、藤堂澄人がそう提案した。

「いいわね」

九条結衣は返事をし、横で無言で彼らを見ていた夏川雫の方を振り向いた。親友の目に軽蔑の色を見て取った九条結衣は、すぐに何かに気付き、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「雫、一緒に釣りに行かない?」

彼女への返事は、夏川雫からの無言の死の凝視だった。

九条結衣は彼女の視線を受けて、ますます居心地が悪くなった。

「あなたたち恋愛中の犬カップルに、さらに私をいじめさせたいの?」

九条結衣:「……」

藤堂澄人はもちろん、妻がどこに行くにも電球を一つ連れて行くことを望んでいなかったが、自分のダメな友人がまだ失恋の傷を癒やしているのを思い出し、非常に思いやりのある口調で言った:

「君は僕たち夫婦の仲の良さに嫉妬してるのか、それとも田中行に会うのが怖いのか?」

藤堂澄人の言葉は、夏川雫の急所を直撃した。田中行こそが、彼女の急所だった。

九条結衣は島主の言葉に含まれる挑発的な意図を明らかに聞き取った。この親友にとっては少し残酷かもしれないが、今回は珍しく何も言わなかった。

夏川雫の顔色が少し青ざめ、その後、藤堂澄人を見つめながら、平静を装って冷笑し、言った:

「私は田中行に対して何も悪いことしてないわ。なぜ彼に会うのを怖がる必要があるの?」

「そうよ、雫は田中行とはもう別れたんだから、彼に会うのを怖がるはずないわ。後ろめたいわけでもないし」

九条結衣が横から割り込んできて、夏川雫を擁護するかのように言ったが、その「後ろめたいわけでもない」という一言が、夏川雫の心に確かな後ろめたさを感じさせた。

もっとも、彼女自身、何に後ろめたさを感じているのかわからなかった。

「そうならば、結衣が一緒に釣りに行って欲しいと言うなら、付き合ってやれ」