679.感動して泣いたんじゃない?

「藤堂澄人、いつもくだらないことばかり言わないで。よく聞いて、私はあなたの妻よ。あなたが大切にする人は、私はもっと大切にする。あなたを不愉快にさせる人には、もっと不愉快な思いをさせてやる。あなたが私を守るように、私もあなたを守るわ」

あなたが私を守るように、私もあなたを守る……

藤堂澄人は、いつか誰かが自分を守ると言ってくれる日が来るとは、これまで一度も思ったことがなかった。

この「分不相応な」言葉は、他人が聞けば笑い話になるかもしれないが、藤堂澄人の耳には、幸せすぎて思わず目が潤んでしまうほどだった。

実は、彼にも誰かに守ってもらう必要があった。最も必要な時に、躊躇なく彼の前に立ちはだかり、たとえその力がどんなに小さくても、ただ彼を守りたいと思う人が。

彼を万能の強者としてではなく、ただ守るべき一人の人間として見てくれる人が。

そして目の前のこの女性は、彼らが出会った最初から、純粋にそう思ってくれていたのだろう。

彼は何と幸運なことか。このように彼女を傷つけた後でも、幸運にも彼女を取り戻すことができ、彼女に愛され、守られ続けることができるなんて。

彼は九条結衣を見つめ、目が少し熱くなってきた。

九条結衣に気づかれないように、視線をそらし、彼女の手を握って言った。「息子を見に行こう」

彼が一歩前に進んだとき、九条結衣がその場に立ち止まっているのに気づいた。振り返って彼女を見ると、突然笑顔で彼の背中に飛びつき、後ろから首に腕を回して、笑いを押し殺しながら言った。

「藤堂澄人、感動して泣いてるでしょう?」

藤堂澄人は彼女が飛びついてきた時、反射的に彼女を支えていたが、そう言われて、軽く彼女のお尻を叩きながら、慌てて否定した。「何を言ってるんだ?」

「違うの?見せて?」

彼女が彼の顔を向けようとしたが、藤堂澄人は素早く避けた。

彼はしゃがみ込んで、九条結衣を背負い上げ、彼女の驚きの声の中、再び彼女のお尻を軽く叩いた。

「一日叩かないと、調子に乗るんじゃないか?」

九条結衣は彼の背中で、九条二郎と楽しそうに遊んでいる息子の方へ走っていく中、嬉しそうに笑い、両手で彼の首をしっかりと抱きしめ、彼の耳元で大きな声で言った。

「見えたわよ、目が赤くなってたじゃない、あはは……」

「叩かれたいのか」