716.吐き気を催す面相

彼女は自分の感情を隠さなかったので、夏川雫への敵意のこもった視線は、九条結衣たち二人にはっきりと捉えられていた。

夏川雫には黒崎芳美が突然なぜ自分をそんな風に見るのか分からなかった。最初から最後まで、彼女は一言も発していないのに、それでも邪魔だというのか?

黒崎芳美に会う前は、九条結衣は木村家の母娘が見た中で最も始末に負えない人たちだと思っていたが、黒崎芳美に会ってからは、木村家の母娘の厚かましさは黒崎芳美には遠く及ばないと感じた。

彼女は黒崎芳美を見つめながら、軽く笑い出した。

「彼との面会を取り持つことは不可能です。でも、あなたが彼に伝えたいことがあるなら、まず私に聞かせてもらえれば、伝えられそうなことなら代わりに伝えてあげてもいいですよ。」

要するに伝言を運びたくないということだ。