715.これこそ家門の不幸

どうして母親の顔を潰すようなことを、他人に話すことができるのでしょうか。

黒崎芳美は藤堂澄人に対して少し恨みを感じていましたが、今回息子に用事があることを思い出し、怒りを抑えました。

「私が行き過ぎ?あなたは恥知らずなのに、人の目を気にするの?」

九条結衣は冷ややかに笑い、黒崎芳美を見つめながら言いました。「あなたが今回、澄人についてはるばる島まで来た理由は知りませんが、一つだけ言っておきます。彼を利用しようなんて考えないでください!」

黒崎芳美は、不倫のことを義理の娘に暴露されただけでも十分に怒りと恥ずかしさを感じていましたが、九条結衣のその言葉を聞いて、それが図星だったのか、それとも冤罪だと感じたのか、声を一段と高くして——

「勝手な言いがかりはやめなさい。澄人は私の実の息子よ。私が彼を利用するわけがないでしょう。藤堂家にあなたのような離間を図る嫁がいることこそ、家の不幸です。」

おそらく黒崎芳美の厚かましさに腹が立ちすぎたのか、九条結衣はかえって笑みを浮かべました。

「あなたが早々に家を出て行ってくれたことに感謝していますよ。お義母様にあなたのような嫁がいることこそ、家の不幸でしたから。」

九条結衣は黒崎芳美の言葉を借りて反撃しました。

「それに、黒崎さん……」

彼女は呼び方を変えました。今さら高橋奥様と呼ぶのは吐き気がするほどでした。

「以前高橋お嬢様にも言いましたが、今あなたにも言っておきます。私は生まれつき反骨精神の持ち主で、人の言うことを聞くのが大嫌いです。澄人はもう母乳が必要な年齢じゃありませんし、たとえ将来彼があなたを藤堂家に迎え入れたとしても、私の前で威張るなんて考えないでください。」

そう言い終わった時、ちょうど夏川雫が病院から出てくるのが見えたので、彼女は黒崎芳美とこれ以上言葉を交わす気もなく、直接夏川雫の方へ歩き出しました。

しかし黒崎芳美は今回、九条結衣を止めたのは口論をするためではありませんでした。さっき年下の人間にこんなに説教されたばかりで、このまま彼女を行かせるわけにはいきませんでした。

「待ちなさい。まだ言い終わっていないわ。」

黒崎芳美は顔を引き締め、手を伸ばして九条結衣の行く手を遮りました。