藤堂澄人は淡々とした表情でそう言い終えると、黒崎芳美の顔に浮かんだ喜色は一瞬で消え去った。
「もちろん、私はあなたを眼中に入れていないが、だからといって私の家族を勝手に煩わせていいというわけではない。今回、ここであなたと話す時間を無駄にしているのは、ただの警告だ。そして、これが最初で最後の警告になる。もう二度と私の妻や私の周りの誰にも近づくな。さもなければ、高橋奥様としての立場も、すぐに終わることになるぞ」
藤堂澄人の口調は淡々としており、眉目にも厳しさは見られず、まさに彼の言う通り、見知らぬ人に対する態度そのものだった。
しかし、それでもなお、彼の言葉に含まれる警告は、決して無視できないものだった。
それまで一縷の望みを抱いていた黒崎芳美と高橋夕は、藤堂澄人のこの何気ない警告の口調に、足元がぐらつき、心臓が大きく震えた。