734.元々人間性なんてない

しかし、あの時の雑誌での黒崎芳美の初めてのインタビューで、彼女の言葉の端々から、決して控えめな人物ではないことが伝わってきた。そして、記者の質問に対する彼女の答え方は、まるで初めて高橋奥様として公の場に出たかのようだった。

なぜ彼女は以前はメディアの前に一度も姿を現さなかったのに、後になってあんなに派手にインタビューを受けるようになったのか?

おそらく、高橋洵が許可したからだろう。

つまり、以前の黒崎芳美は、世間で言われていた通り、高橋洵の愛人に過ぎなかったのかもしれない。率直に言えば、ただの情婦だった。

最近になってようやく正式な立場を得たということだ。

黒崎芳美の本性を知っているだけに、彼女に関する異常な出来事すべてが九条結衣には疑わしく思えた。

そう考えながら、藤堂澄人に向かって言った: