「それに、鈴木大輔はあの日、九条結衣にあんなに辱められたのよ。彼が納得するはずがないでしょう?彼も私たちと同じように、九条結衣を殺してやりたいはずよ。私たちが協力を持ちかければ、きっと承諾するわ」
彼女は高橋夕の両目を見つめながら、まるで自分の成功を目の当たりにしているかのように、輝く光を浮かべて続けた:
「それに、最悪の場合でも、鈴木大輔は鈴木建国の息子よ。藤堂澄人がどれだけ鈴木大輔を軽蔑していても、そこまで極端なことはしないはずよ。ねえ、夕」
彼女は期待に満ちた目で高橋夕を見つめ、同意を得ることを願いながら、露骨な追従の色を隠そうともしなかった。
黒崎芳美の計画は多少リスクがあるものの、確かに九条結衣を泥沼に引きずり込む絶好の機会だった。だから反対の声を上げることはなかった。
どうせ、藤堂澄人に知られたとしても、一方はビジネスパートナーの一人息子、もう一方は実母だ。藤堂澄人が命まで取ることはないはずだ。
彼女については...
関与しないでいれば、自分に累が及ぶことはない。
もし成功すれば、それは彼女にとって絶好のチャンスとなる。見逃す理由などない。
あの気品があり美しい男性が自分のものになると思うと、高橋夕の目の奥にも、抑えきれない興奮の光が浮かんだ。
一方、藤堂夫婦の方では。
藤堂澄人は九条結衣を連れて別荘に戻ると、黒崎芳美に押された一件が気になり、心配そうに言った:
「あの女に押された時のこと、本当に大丈夫か?病院で検査した方がいいんじゃないか?」
九条結衣は藤堂澄人の心配そうな様子を見て、いつもこの人が些細なことを大げさにする習性があることを知っていたので、嬉しくもあり困ったようでもあった。
藤堂澄人の引き締まった顔を手で軽く摘んで、「大丈夫よ。見てたでしょう?假山に遮られて、転んでもいないわ」と言った。
藤堂澄人はまだ心配で、もう一度上から下まで注意深く確認し、彼女の顔色が普通で、体にも怪我がないことを確認してようやく安心した。
体は確かに無事だったが、九条結衣は黒崎芳美母娘にまた一杯食わされた気分だった。
なぜか、高橋夕と黒崎芳美の母娘関係は良好に見えたが、むしろ高橋夕が黒崎芳美の前で優越感を持っているように感じた。