あれこれ考えた末、やはり自分の旦那様に知らせて、備えをしてもらう必要があると思った。
黒崎芳美という人物は藤堂澄人の前では取るに足らない存在だが、小物は厄介だということも分かっていた。
歴史上でも、些細なことで失敗した大物は少なくない。
小人が得意になる時もある。
九条結衣と同じように考えて、黒崎芳美が継娘と同時に島に現れたのは、彼にとって単なる偶然とは思えなかった。
冷たい雰囲気を漂わせる瞳が細められ、危険な気配が彼の目の奥から少しずつ溢れ出してきた。
しばらくして、藤堂澄人が口を開いた。「彼女は何がしたいんだ?」
九条結衣は病院の入り口で黒崎芳美が言った言葉を思い出したが、藤堂澄人には伝えないことにした。
あんな常識を覆すような発言は、自分が一度気分悪くなっただけで十分で、旦那様までそんな思いをさせる必要はなかった。