754.夕は藤堂社長に憧れている

白蓮花を演じるなら、九条結衣は誰よりも上手くやってのける自信があった。

今では黒崎芳美が藤堂澄人の実母で、彼女の姑だということを知る人はほとんどいない。

部外者から見れば、この二人は全く因縁のない間柄なのに、黒崎芳美がこんな卑劣な方法で人を陥れるなんて、まったく許せないことだった。

まさか黒崎芳美に、九条結衣という嫁が気に入らないから息子から引き離したいと言わせるわけにはいかない。

もしそうなれば、黒崎芳美が不倫して、子供二人を捨てて愛人の面倒を見に行ったという輝かしい過去が、今夜ここにいる全員に知れ渡ってしまう。

これらの人々は世界各地から来ているのだから、当然、彼女の過去の醜聞は全世界に知れ渡ることになる。

そうなれば、黒崎芳美はこの界隈で誰からも嫌われる存在となり、誰も彼女を相手にしなくなるだろう。

九条結衣は、彼女が藤堂澄人の実母だと言い出せないことを知っていた。

高橋夕のためだと認めるしかない。そのやり方は同意できないものの、継娘のために全てを捧げる良い評判は得られるはずだ。

黒崎芳美のような利己的な人間は、自分に有利な選択肢を知っている。

案の定、彼女は九条結衣の予想通りの行動を取った。

周囲の人々から投げかけられる非難、軽蔑、侮蔑の視線を受けながら、黒崎芳美は密かに歯を食いしばり、拳を強く握りしめ、かすれた声で言い始めた：

「夕は藤堂社長に憧れているのですが、社長はもう結婚していて...彼女が食事も喉を通らないほど悩んでいるのを見て、私は心配のあまり、藤堂奥様を陥れるような卑劣な手段を考えてしまったのです...」

彼女は一瞬言葉を切った。中にいる高橋夕がこれを聞いているのを知っており、高橋夕の怒り狂った表情が目に浮かぶようで、体が震えた。

しかし、もうここまで来てしまった以上、這いずり回ってでも最後までやり通すしかない。さもなければ、息子も九条結衣も簡単には許してくれないだろう。

「夕は私の実の子ではありませんが、幼い頃から私が育ててきました。実の娘同然に思っています。彼女が食事も喉を通らない様子を見るに忍びなくて、このような策を取ってしまったのです...」

彼女は唇を強く噛みしめ、継娘のために何でもする覚悟を持った、やむを得ない継母の完璧な演技を見せた。