743.彼女は本当に飲み干した

「本当に飲んでしまったわね。賢いと思っていたけど、私の見込み違いだったわ」

高橋夕は軽蔑的な口調で、少し得意げに言った。

本来なら九条結衣に気づかれるのではないかと心配していた。だって、あんなに愚かなくせに自信満々だった黒崎芳美が、突然仲の悪い義理の娘に謝りに行くなんて、誰だって疑問に思うはずだから。

九条結衣は賢いから、黒崎芳美の罠にはまらないと思っていたのに...結局、九条結衣という女の知能を過大評価していたようだ。

あんな頭じゃ、藤堂澄人にふさわしくないわ。

高橋夕はあんな素晴らしい男性が自分のものではないことを考えると、胸が苦しくなった。

一方、黒崎芳美は九条結衣が目印をつけたシャンパングラスを手に取って飲み干した時、やっと胸のつかえが下りた。

少なくとも、彼女の計画は成功した。高橋奥様の座は守られた。